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食事由来の成分「フィセチン」による免疫炎症の抑制効果を解明

2025.07.24

連合農学研究科博士後期課程3年(掲載時)の何 子煜(He, Ziyu)さんの研究成果が、インパクトファクター6.0の国際英文誌『Antioxidants』に掲載されました(2025年2月4日)。

本研究では、イチゴやリンゴ、タマネギなどに含まれる天然フラボノイド「フィセチン」が、免疫系の重要なサイトカインであるインターフェロン・ガンマ(IFN-γ)によって誘導されるマクロファージの炎症応答および代謝異常を抑制する作用を持つことが明らかになりました。

マクロファージは、病原体の排除や炎症反応の制御を担う免疫応答の中心的な細胞です。IFN-γは、マクロファージを炎症誘導型(M1型)に分極させる代表的なサイトカインとして知られていますが、食物由来のフラボノイドがこの炎症性応答をどのように調節するかについては、これまで十分に解明されていませんでした。

本研究では、IFN-γにより活性化されたマウスマクロファージ細胞(RAW264)にフィセチンを処理し、その変化をRNAシーケンシング(RNA-Seq)と細胞代謝解析の手法を用いて詳細に検討しました。解析の結果、フィセチンは、Il6、Nos2、Cxcl9などの炎症関連遺伝子や、CD80、CD86などのマクロファージM1型マーカーの発現を顕著に抑制することが示されました。さらに、IFN-γによって低下した酸素消費率を回復させ、乳酸の過剰な産生を抑制することで、ミトコンドリアのエネルギー代謝機能の改善にも寄与することが明らかとなりました。加えて、モチーフ解析では、フィセチンが転写因子IFN調節因子の活性化を抑制する可能性が示唆されました。さらに、ウェスタンブロット解析により、フィセチンはJak1、Jak2、STAT1のリン酸化を抑制し、IFN-γ刺激によって誘導されるリン酸化STAT1およびIRF1の核内蓄積を低下させることが確認されました。

これらの結果から、フィセチンはIFN-γ刺激によるマウスマクロファージの炎症を抑制し、Jak1/2-STAT1-IRF1経路による細胞代謝の乱れを改善する有力なフラボノイドであることが明らかになりました。

【掲載論文】The Effects of Fisetin on Gene Expression Profile and Cellular Metabolism in IFN-γ-Stimulated Macrophage Inflammation
【著者名】Ziyu He, Xuchi Pan, Kun Xie, Kozue Sakao, Jihua Chen, Masaharu Komatsu, De-Xing Hou
【掲載誌】Antioxidants
【DOI】https://doi.org/10.3390/antiox14020182